WIESEの歴史 (Since 1845

創生期 ~偉大な父ジュール~

ジュール・ヴィエズは19世紀の誇るシルバー&ゴールドスミスとして
フランスのジュエリー史にその名を刻んでいる。
ジュールは1818年にベルリンで生まれ、
プロイセン王国の宮廷御用達のゴールドスミス
Johann Georg Hossaeur に16才で弟子入り。
その後パリに移住し、J.P.モレル(*ショーメの前身)
で名を挙げたのち1839年(21才)にフロマン=ムーリスの工房に移る。
ここでもジュールの才能は遺憾無く発揮され、
程なくして工房長の地位にまで登りつめる。
師のフロマン=ムーリスはジュールを重用し、
1844年にジュールが独立して工房を
構えたのちも彼を手放さず
工房は事実上フロマン=ムーリスの専属であった。
1849年のパリ産業博覧会でジュールは共同制作者として
師のフロマン=ムーリスと並んでメダルを獲得。
師弟の信頼関係はクリエーションとして結実し、
1855年のフロマン=ムーリスの死後も息子のエミールが
当主となる1859年まで両社の蜜月関係は続くこととなる。
一方、1855年のパリ万国博覧会では自らの名前を冠して
WIESE単独のスタンドとして出展。
見事に一等メダルを受賞し一気にその名を知らしめた。
同年代のフランスの作家M.Magneはこう記している。
『素晴らしいゴールドスミスでありジュエラー。
(初出展にして)
すでに名声を確立している。
ささやかな小品からすらも
彼の作品の重要性と大胆な実験性が
おのずと見て取れる。
それはアートと美に対する意識であり
奨励されるべきものだ』

1855年に製作されたジュール・ヴィエズ作のブレスレット(パリ市立美術館所蔵)

1861年にイタリアのカンパーナ公爵の古代ジュエリーの
コレクションをナポレオン3世がルーブル美術館のために
購入するとパリのジュエラーの間でも
考古学スタイルのジュエリーが流行。
ジュールはローマのカステラーニを模範に
このテーマでも精力的に制作し
WIESEはフォントネイと並びフランスにおける
考古学スタイルジュエリーの第一人者となった
1862年のロンドン万国博覧会で再び金メダルに輝くと
WIESEの評価と名声は不動のものとなる。

円熟期 ~息子ルイによってもたらされた黄金時代~

”並外れて控えめながら類まれな才能に恵まれた芸術家”
アールヌーヴォーを代表するジュエラーの一人であり、
同時に19世紀フランスのジュエリー史の研究家でもある
アンリ・ヴェヴェールはWIESEの2代目ルイをこう賞賛している。
1880年にジュールが引退すると、
父のもとで研鑽を積んでいた息子のルイが
28才で工房を引き継いだ。
ルイのスタイルは基本的に父ジュールを継承するものだったが、
父のデザインを踏襲しつつも時代に合わせて
細かなアップデートを加えている。
フロマン=ムーリスの影響を色濃く残した
ネオルネサンススタイルの重厚な作風から、
ブランドの根幹は残しつつもより
デザイン性に重きを置いたウェアラブルなジュエリーへ。
父のカリスマ性を生かしつつ
更なる進化を推し進めたルイは
ブランド円熟期のリーダーとして理想的な才覚を備えていたと言える。
現在マーケットに出回っているWIESEのジュエリーは
ほとんどがこのルイの時代に製作されたものとなっている。
WIESEの作品は美術的に高い評価を受けており、
パリ装飾美術館や大英博物館にも作品が所蔵されている。
ジュールが残した図案を元にルイが製作したブローチ。(大英博物館所蔵)
ゴシック建築に見られるトレフォイルの窓にガーゴイル
(同じくゴシック建築に見られる想像上の怪物)
をあしらったネオルネサンス(ルネサンスリバイバル)
スタイルのデザインがWIESEらしい。
神木オークの葉があしらわれている。

ルイ作のペンダント。(19世紀末〜20世紀初め)

WIESEスタイル

~古の美への憧憬をジュエリーに昇華したゴールドの彫刻家~

WIESEの作風は中世やルネサンスなどの
過去の芸術に対するオマージュを作品に昇華した、
いわゆる歴史主義(ヒストリシズム)に裏打ちされたものである。
ジュエリー制作のかたわら、
鏡やナイフ、ゴブレット(盃)などの装飾品や
ハードストーンによる立体彫刻も数多く手がけたWIESE
(*フランスのオータン市からは儀礼用の剣の制作の依頼を受けている。)
中世のゴシック建築の装飾モチーフやルネサンス美術から
インスピレーションを得た彫刻的な造形は
ジュエリー作品にもいかんなく発揮されている。
建築や彫刻作品から得た雄大なイメージを
ミニチュアサイズの立体造形に落とし込む確かな技術力。
本来大きなサイズで作られた彫刻のモチーフを
ジュエリーのサイズで違和感なく再現するには高い技術力と、
同時に核となる要素を余すことなく抽出するデッサン力が必要とされる。
大きなものをそのまま縮小しただけでは”そのものらしさ”は再現できない。
その離れわざを製作上の苦労を微塵も感じさせることなくするりと
自然にやってのけるのがWIESEの真骨頂。
ゴールドの彫刻家と呼ばれる所以でもある。
古の美への憧憬と、それを実現するための高い金工技術に
裏打ちされた比類なき造形力。
あるいはアーティストの器に宿った職人魂。
この両輪こそがWIESEのドライビングフォースと言えるのではないだろうか。


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yumiko@thirtythree.jewelry

Thirty Three Trading.B.V

代表 前川 有美子

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